便をスキャンするトイレ
garDENのモデルハウス兼自宅として使っている家が、10年を迎えました。住み心地に不満はないのですが、10年も経つと、あちこちで考えどきがやってきます。
先日は、トイレの便座が上がらなくなりました。パナソニックさんのアラウーノで、人を感知すると自動でふたが開くタイプです。10年、毎日何度も開け閉めしてきたのですから、無理もありません。
10年は、設備の節目
修理を調べていて、あらためて確認したことがあります。メーカーは、製造を打ち切ったあとも修理用の部品を一定期間持っていますが、その期間には限りがあるということです。パナソニックさんの補修用性能部品の保有期間を見ると、アラウーノは製造打ち切り後7年。キッチン本体もシステムバスも洗面化粧台も、同じく7年です。
つまり、10年住んだ家の設備は、直せるかどうかがそろそろ分かれ始める時期にあたります。躯体は50年でも100年でも使える一方で、電気と水を使う機械は、家よりずっと早く寿命が来る。そういうものだと割り切ったうえで、取り替えやすくしておくことが大事だと思っています。
そこで、どうせなら今のトイレはどうなっているのだろうと調べてみました。そして、ずっと気になっていた製品にたどり着きました。便をスキャンするトイレです。
落ちていく便に、光を当てる
TOTOさんが2025年8月に発売した「ネオレストLS-W/AS-W」には、「便スキャン」という機能がついています。用を足すたびに、便の形(硬さ)・色・量を自動で計測してくれるものです。

ネオレストLS-W(出典:TOTO株式会社「ネオレストLS-W/AS-W」商品ページ)
仕組みが面白いと思いました。落下している最中の便にLEDの光を当て、その反射を読み取ります。使っているのは、バーコードリーダーやコピー機のスキャナーと同じラインセンサー。1本の線で読み取った像を重ねて1枚の画像をつくるので、落ちていくものを捉えるのに向いているのだそうです。
開発の初期にはカメラで撮る案もあったけれど、それだとトイレットペーパーまで写り込むし、プライバシーの面でも好ましくない。だからラインセンサーにした、と開発ストーリーで語られています。便だけが映像になり、写真としては保存されない。ここは、多くの方が最初に気にするところだと思います。
データは、アプリに届く
読み取った結果は、スマートフォンの「TOTOウェルネス」アプリに自動で記録されます。形は7段階、色は3段階、量は3段階に分類され、その日の状態、月ごとの傾向、1週間や1カ月のレポートが見られます。
さらに、状態に応じたアドバイスが表示されます。「野菜スープをつくってみては」「毎晩7時間の睡眠を意識しましょう」といった、食事や運動、生活のヒントです。記録だけで終わらせず、次の行動につなげるという設計になっています。
家族で使う場合は、リモコンの「個人設定」ボタンで、立ち上がる前に自分の番号を選ぶ方式。最大6人まで登録できます。アプリ自体に月額料金はかかりません。なお、これは医療機器ではなく、診断や治療を目的とするものではない、とTOTOさんも明記しています。あくまで、自分の体に気づくための道具です。
1000のデータを集めた人たち
この機能で私がいちばん惹かれたのは、開発の裏話でした。
便の状態を数値で判定するには、まず基準がいります。ところが、世界的に使われているブリストル便性状スケールは、「バナナ状」「ヘビのとぐろ状」といった言葉の分類で、数値の基準ではありません。そこでTOTOさんは、本社や研究所、社員のご自宅にテスト機を置き、約100人が協力して約1000件のデータを集め、そこから500件ほどを選んで独自の基準をつくったそうです。
7段階すべてを揃えるのが難しく、両極端のタイプはどうしても集まらないので、最後は開発チームが自分の体調を調整してコンプリートさせた。資料に便の画像が入るので、社内会議は昼食前に設定しない、資料は白黒で印刷する。そんな話が、開発者ご本人の言葉で綴られています。
新しい商品は、こういう地道な積み重ねの上に立っているのだと思うと、カタログの1行が違って見えてきます。
わが家をどうするかは、まだ決めていません
ネオレストLS-Wは493,000円(税込542,300円)、AS-Wは449,000円(税込493,900円)。便座の部品を替えて延命するのか、まるごと入れ替えるのか。正直なところ、まだ決めかねています。
ただ、調べてみてよかったと思っています。昔の和式便器は、自分の目で状態を確かめやすいものでした。ところがアラウーノは洗剤の泡で洗うので、見ようと思っても見えません。いつか体調のわかるトイレができればいいのに、と前から考えていました。それが、もう商品になっているわけです。
だからこそ、新しく家を建てるときには、機器を選ぶことと同じくらい、取り替えられるようにしておくことを大事にしています。配管の経路、コンセントの位置と数、通信環境、そして必要な広さ。10年後、20年後に何が出てくるかは分かりませんが、受け入れられる余白は今つくれます。
10年住んで初めて分かることが、たくさんあります。自宅をモデルハウスとして使い続けているのは、その実感をお客様にお伝えしたいからです。設備の入れ替えどきで迷っておられる方も、これから建てる方も、遠慮なくお声がけください。私たちも一緒に考えます。

田中 健治