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卒FITで考える、蓄電池選び その2

前回の最後に、V2Hのことを書きました。以前は変換のロスが大きくて実用的ではないと判断していたけれど、そのロスを抑えた商品が出てきている、と。今日はその話です。

V2Hとは何か

V2Hは Vehicle to Home の略で、電気自動車に貯めた電気を家に戻して使う仕組みのことです。

電気自動車の電池は、家庭用の蓄電池とは桁が違います。家庭用が5kWhから20kWh程度なのに対して、電気自動車は40kWh、60kWhといった容量を積んでいます。すでに家の前に大きな蓄電池が停まっているのだから、それを使わない手はない。V2Hの発想は、そこから来ています。

ただし、変換のロスがある

いいことずくめのようですが、ここに落とし穴がありました。

電気には、直流と交流の2種類があります。太陽光パネルがつくるのは直流、家のコンセントに来ているのは交流、蓄電池や電気自動車の電池に貯まっているのは直流です。種類の違う電気をつなぐたびに、変換という作業が要ります。

これまでの一般的なV2Hは、太陽光でつくった直流をパワーコンディショナで交流に変え、それをV2H機器がまた直流に戻して電気自動車に充電し、家で使うときにはもう一度交流に変換する、という道のりでした。変換は1回ごとに数%ずつ電気を減らします。1回なら気にならなくても、行って帰ってで何度も通れば、その積み重ねは無視できない大きさになります。

昼につくった電気を、夜に使うために車へ預ける。それだけのことに、目減りの手数料が何度もかかる。私が「実用的ではないな」と思ったのは、この部分でした。

ニチコンさんのトライブリッド

その前提を変えたのが、トライブリッド蓄電システムです。京都に本社のあるニチコンさんの製品で、いまはESS-T5/T6シリーズが現行になっています。

トライブリッドという名前のとおり、太陽光・蓄電池・電気自動車という3つの電池を、1台のパワーコンディショナでまとめて制御します。要点は、この3つを直流のままつないでいることです。交流に出たり入ったりする回数が減るので、そのぶん変換のロスが減る。理屈としては、とてもすっきりしています。

太陽光・蓄電池・電気自動車を1台のパワーコンディショナで制御するトライブリッド蓄電システムの図解
図:garDEN作成/出典:ニチコン「トライブリッド蓄電システム」

ニチコンさんによれば、この3電池をまとめて直流で制御する仕組みは、世界で初めて開発したものだそうです。家庭用蓄電システムの累計販売台数は24万台を超え、V2Hではシェア1位。この分野では、いちばん経験を積んでこられた会社です。

19.9kWhまで、来ました

もうひとつ、前回からの宿題だった容量の話です。

現行のトライブリッドは、蓄電容量が4通り。従来のシリーズと比べて、最大で33%の容量アップだそうです。

7.4kWh / 9.9kWh / 14.9kWh / 19.9kWh
(19.9kWhは、家庭用として業界最大級)

前回、私がファーウェイさんの15kWhに惹かれたと書きました。それを国産が追い越して、19.9kWhまで来た。しかも京都のメーカーで。これは私にとって、かなり大きな変化でした。

設置場所も選べます。屋内に置く型、屋外に置く型、どちらでもいい型。動作温度はマイナス10度から40度までで、直射日光の当たる場所は避ける必要があります。前回、100kgを超える箱をどこに置くかが設計の課題だと書きましたが、屋内か屋外かを選べるだけで、間取りの自由度はずいぶん違ってきます。

停電のときに、どれだけもつか

容量の数字は、停電の場面に置き換えると分かりやすくなります。ニチコンさんの試算では、家じゅうの消費電力を430Wとしたとき、次のようになります。

7.4kWh 約14時間
9.9kWh 約20時間
14.9kWh 約29時間
19.9kWh 約40時間

ここに電気自動車が加わると、桁が変わります。60kWhの車をつなげば、およそ70時間、3日ぶん。停電が3日続いても、エアコンもIHもいつもどおり使えるということです。

在宅避難という言葉が現実味を帯びてきたいま、この差は小さくありません。ハザードマップの記事にも書きましたが、備えは設計の段階でほとんど決まってしまいます。

2026年のいま、私が惹かれているところ

いくつか、住宅をつくる側から見て、なるほどと思った点を挙げておきます。

まず、パワーコンディショナと一体であること。太陽光を載せて10年経つと、パワーコンディショナが更新の時期にさしかかります。卒FITとパワコンの寿命は、だいたい同じころにやってくる。どうせ替えるなら、蓄電池も電気自動車もまとめて面倒を見てくれる1台に置き換えたほうが、配線も設置スペースも無駄がありません。

次に、全負荷200Vが標準であること。停電したときに、特定の回路だけが生きるのではなく、エアコンもIHも含めて家全体が動きます。ここは体感がはっきり違うところです。

それから、保証。パワコンも蓄電池もV2Hも、15年の無償保証がついています(ニチコンオーナーズ倶楽部への無料登録と申請が必要です)。15年という数字は、卒FIT後のもうひとまわりをちょうど覆う長さです。

そして、あとから育てられること。まずパワコンと蓄電池を入れて、家族が増えたら蓄電池を足し、電気自動車を買ったらV2Hを足す。追加の設置は2034年12月まで可能とされています。いま電気自動車に乗っていない方でも、先に道だけ用意しておける設計です。

加えて、前回書いた「どうせなら日本のメーカーで」という私の気持ちにも、これは応えてくれました。京都の会社であることは、理屈ではありませんが、やはり嬉しい。

気をつけておきたいこと

もちろん、いいところばかりではありません。

ひとつは価格です。希望小売価格は公表されていますが、実際の取引価格は販売店によって変わります。いずれにせよ工事費まで含めれば数百万円の買い物で、京都市の断熱改修等補助の3分の2という補助率があってようやく、という金額であることは正直に申し上げておきます。

もうひとつは、電気自動車の側の事情です。充放電のあいだ、車の側でも電池を保護するために電力を使います。対応車種も決まっていますので、お乗りの車が使えるかどうかは事前の確認が要ります。

設置場所も、機器の寸法と重さ、駐車位置と充電口の向きで、置き方やケーブルの長さの選択が変わります。V2Hポッドは壁掛けかポール、V2Hスタンドは壁掛けか据置き。これは図面の段階で決めておきたいところです。

わが家は、どうするか

まだ結論は出ていません。断熱改修の中身と組み合わせて、どこまでを一度にやるか。そこを詰めているところです。

ただ、去年の時点で「V2Hはまだ早い」と思っていた私が、1年で考えを変えたのは事実です。設備の世界は、待っていると損をすることもあれば、待ったから見えてくるものもある。今回は後者でした。15kWhで悩んでいたら、19.9kWhが出てきた。そういう1年でした。

これから家を建てられる方は、いま電気自動車をお持ちでなくても、あとからV2Hを足せる余地を残しておく、という考え方もあります。駐車場までの配線ルート、分電盤の余地、機器を置く壁。どれも設計のときならほとんど費用のかからない備えですので、こういうことも考えておくのもひとつかと思います。

わが家を実験台にして分かることは、これからも包み隠さずお伝えしていきます。迷っておられる方は、遠慮なくお声がけください。一緒に考えていきましょう。

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この記事を書いたスタッフ

田中 健治

田中健治

代表取締役

「たのしく生きる」ことが人生理念です。 「たのしく生きる」為には「笑顔と感謝があふれる社会」が必要だなとの想いで、いっぱいです。 家というモノではなく、豊かなくらしを追い求めて家づくりを考えています。 豊かなくらしを追い求めた家。私たちがつくる家です。